殷、周は全国支配をしていたわけではなく、同時代には日本サイズの地方権力が並列しており、その中で漢字圏、青銅器の作成により、周は権威を保っていた。春秋戦国時代はそんな地方文化と、統一との力がぶつかった次代であり、戦国時代は、文書行政が始まり、中央から地方へそんな能力を持った行政官が派遣されたのが、諸子百家であるといったところの案が展開されます。その中で、「春秋」は孔子が書いたものではないという説も紹介されます。中身は超難解。読み難いです。amazonに、単純な間違いなどが指摘してあって、著者のサイトに、いいわけが書いてありますが、その言い訳がかなり適当なのには笑いました。どちらにしても、殷、周時代の新しい発掘により春秋、戦国が読み替えられているという現状がわかるだけでも面白かったです。★★
イギリス秘密情報部の実行部隊と、ラグクラフトと、数学的な解析により異世界への門が開かれるという、3つの要素を混ぜ合わせると、この本に収録された2作品になります。作者もまったく同じ設定の小説や、ゲームが存在していることを後書きで書いてますが、最近、この手のものが多いです。強い人間主義で、平行宇宙の存在に新しい意味をつけることが可能になったせいでしょうか。昔のパラレルワールドものと筋書きはそっっくりなのに、まったく別の世界観が発生しているのは、物理学や数学の進歩に加えて、世界観が変わってきたことが影響しているのかもしれません。内容は、アニメ「鋼鉄の錬金術師」と同じで、ナチスのトゥーレ協会が行った、ヴァンゼー降霊がテーマになっていて、チューリングによって編み出された解析学によって、他の宇宙との窓が開かれるという話しです。主人公は、パームトップコンピュータの解析能力と、栄光の手(死人の左手で作ったオカルト装置)などを駆使して異世界の存在と闘います。★★★★
アーサー王伝説の起源をケルト人よりも遡ろうとする、意欲作です。アーサー王伝説は、3つの起源を保っている。ひとつは、古代カスピ海沿岸、コーカサス地方に住んでいた、スキタイ系民族のオセット人が伝えるナルト叙事詩。これ、アニメのナルトとは違いますよ。2つめは、実在したローマ軍団長で、アーサーの元になった人物。3つめは、北ブリテンに移住したローマの外人部隊サルマティア人の伝説。これが混じり合って、現在のケルト系の伝説となったそうです。
しかし、逐語訳の論文はまったく日本語になってなくて、読みにくいこと限りありません。ナルト叙事詩なども、いきなり登場し、それがどういったものかは、説明なし。知ってて当たり前ということか?とりぜず、後書きでおおよそをつかんで、その後前に戻って読むことをお勧めします。★★★
今年も恒例、昨年1年間読んだ本の中から、何冊かご紹介したいと思います。
昨年、読んだ本は、235冊。社会人としては、まずまずの冊数でした。
今年は、ノンフェクションに当たりが多く、これは一昨年の「不都合な真実」のバカ売れの影響でしょうか。
まず、1冊目は、
★「アルジャジーラとメディアの壁」石田英敬、中山智香子、西谷修、港千尋
これは社会学者が数人集まって、アルジャジーラ見学に行こうという、いい加減な動機で行ってしまい、その感想を集めた本なのですが、そこは天才、西谷修です。彼の章だけが、飛び抜けて素晴らしい。その中でも、「アルジャジーラはいかなる意味でもドメスティックではなく、ローカルであることによってグローバルな意味をもち」という言葉が忘れられません。
他にも、
★「あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実」ピエトラ・リボリ
99年のシアトル、WTOの総会に対してデモを行う女子学生を見た著者は、資本主義を攻撃するプラカードに、あなたがもう少し勉強して真実を知る力があれば、そんなことはやめるでしょうというリベラルな感想を持ちますが、実際に自分で調べて行くに従い、実は彼女が正しかったことを、著者が発見していきます。多くのグローバル企業が市場原理に従っているのではなく、市場原理を政治的に抑制・回避することを原則として発展していることを教えてくれます。
同様の本として、
★「チョコレートの真実」キャロル・オフ
80年代、アフリカの奇蹟と呼ばれ、見事な経済的成功を収めたコートジボアールが、メジャーな食料カルテルと、世界銀行、自由貿易主義の名の元に、経済を崩壊されてしまい、食料輸入国になる過程が描かれています。今の資本主義が、まるで自由競争になっていない、ちょと恐ろしい現実が描かれています。
また、アメリカ国内でも
★「ファストフードが世界を食いつくす」エリック シュローサー
読んだことのない人たちによって、マクドナルドの食べ物が危ないという本だと宣伝されてますが、巨大資本がロビー活動などにより、法律をすり抜けて、自由競争を行わず、社会を崩壊させつつあるというのが、この本の趣旨です。
さて、パラダイムシフト系のものですが、
★「時間・愛・記憶の遺伝子を求めて 生物学者シーモア・ベンザーの軌跡」ジョナサン・ワイナー
時間感覚を測るタイマー遺伝子、記憶力生み出す遺伝子、そしてsexの行動様式を決定する遺伝子などが見つかり、同じモノが人にもあることまでが証明されていきます。分子生物学が、これからの世界にどれだけ衝撃を与えるのか、ショックを受けないためにも、今のうちに読んでおくべき本です。
他に仕事関係で勉強になったなと思ったのは、
★「ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ」ドン・タプスコット/アンソニー・D・ウィリアムズ
ウィキペディアの元ともなった、ウィキウィキはもとより、アレクサインデックス、MITのファブ・ラボ、ブロゴスフィア、ピアプロダクション、タギング、アイデアゴラ、LAMPスタック、プロシューマ、マッシュアップ、ピープルファインダーなどの真の意味を解説しつつ、その根幹に知識、経済活動そのものがピアプロダクションに移行しているという新しい世界観を提示しています。
また、最近、WEBは一種の写本文化を産み出しているのではないかと考え始めていて、比較の意味で、
★「図書館の興亡―古代アレクサンドリアから現代まで」マシュー バトルズ
も読んでみました。読んでるうちに、今のWEBと作り方が同じジャンとか、思えます。
小説では、SF作家のチャールズ・ストロスが凄かったなというのが感想です。
★「シンギュラリティ・スカイ」チャールズ・ストロス
は、魔法のような量子理論的科学が世界を変えていく過程が描かれていて、衝撃的な本でした。
まだ読んでませんが、12月に発売されたばかりの、「残虐行為記録保管所」もヒューゴー賞受賞ということで、読むのが楽しみです。
音楽SFの名作「デュオ」の飛浩隆も、
★「ラギッド・ガール―廃園の天使」
で、ちょっと恐ろしいことを始めたようです。
最後に、
★「ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く」リサ・ランドール
は、ちょうど今読んでます。
ひも理論と、M理論を、それに標準モデルを結ぶ、新しい考え方「ブレーン」についての、初の数式なしの解説書です。
後書きに「ダ・ヴィンチ・コードのブームにのったものでない」とわざわざかいているぐらい、そっくりというか、ダ・ヴィンチ・コードの続編「天使と悪魔」にそっくりです。古代に封印された科学技術を手にした者が世界を手に握る。宝物探しは、ケルンから、ローマ、アレクサンドリア、そしてアビニヨンへ。ただ、考古学や、歴史に対する知識の薄っぺらさが全面に出てしまい、主人公も、悪役も絶対にしなないという、どうしようもない非現実感的な世界が延々と繰り返されます。がっかり。せめてもう少し、伝奇的な要素でもあればよかったんですが、東方の3博士に、アレクサンダー大王、古代の7不思議に、テンプル騎士団と大技過ぎてなさけなくなります。★
古代の甲骨文字から、現代まで。中国の書を写真で見せてくれます。古代は拓本、それが宋時代になると、紙になり、しかも、所蔵が日本だったり、とにかく勉強になりました。それと、富岡鉄斎の印と、蘇しょくの関係もコラムでわかって、うれしかったです。
第1章 古代文字の時代 殷~漢(紀元前13~紀元3世紀)―文字の誕生から漢字の祖形の成立まで
第2章 現行書体の完成期 三国時代~隋(220年~618年)―楷書・行書・草書の誕生から確立期
第3章 楷書の黄金時代 唐・五代(618年~960年)―規範としての楷書の確立と新しい表現の展開
第4章 自由な表現の展開 宋・元(960年~1368年)―書人の個性が反映されたさまざまな書風
第5章 現代につながる多彩な表現 明・清(1368年~1911年)―長条幅連綿草と、碑学・帖学の二大潮流の展開