マネ・モネにルノアール、美術館が展示会をやれば、かならず行列になる、その印象派の魅力とは? ではなく、印象派こそ、世界で初めて、巨額のマネーで取引が始まったオークションや、現代の画商を作った美術作品であり、その成立過程を、かなりシビアに書き込んでいます。著者は、元々サザビーズ&クリスティーズの社員であり、いくらでもエピソードを書き込んで面白くできたと思われますが、ひたすら筆を抑えて、歴史叙述に徹してます。読んで面白くはないのですが、勉強になること山のよう。頭のいい人の本は違います。アメリカで、ヘミングウエイ好きにも、ロストジェネレーションの成立過程を再考察するにも役立つ資料です。こうした本を、ハリウッド的に出さない力量にひたすら、感謝と驚きを。こういう本があるから、乱読はやめられません。★★★★
超ひも理論の解説書「エレガントな宇宙」の作者渾身の第2段です。今回は、時間と空間について物理学がどこまで考えられるようになったのか。その切り口の見事さに、呆然としました。
アインシュタインの2つの相対性理論、量子論、インフレーション理論、重力の統合、超ひも理論、ブレーンワールドまで、それぞれの理論が、時間と空間についてどのような新しい見方を示してくれたのかを、教えてくれます。エントロピーが減少するのは、この宇宙が成立時に、とんでもなく平坦で高いエントロピーを持っていたから、その理由をインフレーション理論がどう扱えるようにしたのか、その結果、時間の矢が、未来にも過去にも流れる現在の物理学においてどう考えられているのか。時空という切り口があることで、今までにない、解説書になっています。ここ10年で読んだ、科学解説書で文句なく1番面白いし、ほとんどのSFがみじめに見えるほど、世界の見方を変えてくれます。とにかく、勉強不足の部分を調べなおして、できるだけ早く、もう1度読みなおしたいと思ってます。★★★★★