@masatofujii

朝日新聞社の書評欄で書名を間違うとは

問題の記事がこれ。「ロボット道楽の逆襲」になってます。下にあるリンクは、無事、ロボ道楽。誰か教えてあげてね。

水の未来 世界の川が干上がるとき あるいは人類最大の環境問題 フレッド・ピアス

マルク ド・ヴィリエの「ウォーター―世界水戦争」、ジェフリー・ロスフェダーの「水をめぐる危険な話」に続く世界の水資源問題を直接取材した労作ルポルタージュです。最新の現状を実際に取材しているようです。しかし、短時間でここまでの取材は難しいので、ある程度決め打ちで公平さには欠けているのかもしれません。それにしても、水が問題をかかえている現状がわかります。解決策として、インドのタンカや、点滴灌漑、中国の雨水利用などが紹介されていて、問題だと叫ぶだけで終わっていないのが救いです。★★★

リンカーンの夢 コニー ウィリス

コニー　ウィリスの歴史ものですが、初期作品だけあって、現実と歴史が干渉する部分が読んでいても納得できません。登場人物が狂気に侵されているのか、歴史が流れ込んでいるのか読者がわからなくなるべきなのに、そんなところもなし。これからって感じがします。★★

アリアドニの遁走曲（フーガ） コニー ウィリス シンシア フェリス

15才の少女が国際スパイを相手に大活躍とそのままの小説ですが、表現が未熟。とても、コニー　ウィリスとは思えません。とにかく下手。もともと心理描写をストレートに書く人ではないので、こうした冒険活劇を手掛けたこと自体が間違いなのでしょう。★

時間のない国で ケイト・トンプソン

アイルランドの妖精譚。本場イギリスで、賞を総なめですが、それほどの作品とも思えません。時間を、お母さんのために買ってあげようとするストーリーは、モモそっくり。アイルランドの伝統音楽が大きなモチーフになってますが、この辺りは映画タイタニックぐらいしか知らない僕には判断できません。★

最後のウィネベーゴ コニー・ウィリス

ヒューゴー賞・ネビュラ賞・SFクロニクル誌読者賞・ローカス賞他、収録作4篇あわせて全12冠という、短編というより中編を集めた日本オリジナル本。最後で、ニヤリと笑えます。訳者の大森望さんの後書きも面白いです。★★★★

日本の国宝、最初はこんな色だった 小林泰三

デジタル復元というで、NHKで放映された復元の、著者の感想といったレベルです。もう少し突っ込んだ話が読みたかったです。★

白雨 慶次郎縁側日記 北原 亜以子

今回は、年をとって、一人でさびしいという話ばかり。年をとっても、それなりに頑張るのは難しいのでしょうか。しかし、日常をきれいに拾い上げてます。★★★

東天の獅子 第２巻 天の巻・嘉納流柔術 夢枕 獏

警視庁武術試合が始まります。今回は、講道館の敵役の超人ぶりが紹介されます。しかし、論理的という講道館以外に、合気まででてきて、本当に後2冊で終わるんでしょうか。★★★

柳生薔薇剣 荒山徹

東慶寺を舞台に、柳生一族の超美少女で剣の達人が大活躍ということで、主人公のステレオパターンぶりに、読むのが恥ずかしくなります。★

魔岩伝説 荒山徹

朝鮮通信使がどうして続けられたのか、その秘密をめぐって、若き日の遠山の金さんと、朝鮮妖術師が対決します。まだ突き抜けていない初期作品といったところ。★★

太陽の中の太陽 カール・シュレイダー

宇宙空間に浮かぶ巨大な風船。その中に、人工太陽をいくつも浮かべ、回転重力で生活する。重力は、お金をかけて発生させるもので、富の印。こんな世界の中にスチームパンク的人類社会が。バイクを走らせると、下が発生するとか、これ原書で読むべきですね。★★★

プロバビリティ・ムーン ナンシー・クレス

三巻完結の一作目。1時間番組は、1時間で終わるために起承転結をといった感覚がなく、ゆっくり読むと目指しているリアリティがじんわりとわかってきます。持ちモノや、家具、自然描写が細かくて効果的に使われています。内容的には、これからですが期待大。★★★

高麗秘帖 荒山徹

妖怪や、妖術がでてこない以外は、その後のテーマが全て盛り込まれています。ただし、日本人がカッコよすぎ。李舜臣を暗殺しようとする藤堂高虎Vs派兵を止めようとする小西行長。後半の海戦は、史実を織り交ぜすぎて盛り上がりませんが、中盤までの勢いで読み終われます。しかし、これで革命が起こらない朝鮮も信じられないところがあって、歴史の読み方には疑問がいっぱい。★★★

名探偵クマグスの冒険 東郷隆

ロンドン在住時代の、南方熊楠がその博覧強記を使ってホームずばりの探偵役を演じます。ロンドンの風俗なども面白く、伝奇探偵小説というべき小説。登場人物が実名なので、ネットで調べると面白いです。★★★

ドングリと文明 偉大な木が創った1万5000年の人類史 ウィリアム・ブライアント・ローガン

狩猟採集時代、人間はドングリを食べ、チャタルヒルクのような牧畜狩猟社会を築く。その後、ナラや、カシの木を炭にすることで青銅器や、鉄器を作り、板を得ることで、道路や建物を建て、船を造り、インクを作った。西ヨーロッパでは、産業革命まで文明を支えてきたものは、ナラやカシの木だったという文明論です。しかし、なければ他の物を使ったし、文明論として確立するには大げさすぎるようです。実際、すぐに道路や家や、皮なめしの技術的な方法に移ったのは、書くことがなくなったからでしょう。それでも、面白い捉え方であることは確かです。杉文化に素早く転身した？日本との比較も面白いかもしれません。★★★

東天の獅子 第１巻 天の巻・嘉納流柔術 夢枕 獏

明治時代の講道館柔道をテーマにした、格闘小説。歴史ものとして、殺人の技でない格闘を描くのにぎりぎりの時代をうまく捉えていると思います。タイトルの東天とは、小説姿三四郎に出てくる真崎東天を思い出しますが、どういう意味なのか次巻が楽しみです。★★★

柳生百合剣 荒山徹

山田風太郎風、伝奇コメディとでもいえばいいんでしょうか。コメディなのに、作者が照れてるので失敗作としかいようがありません。★

見えない宇宙―理論天文学の楽しみ ダン・フーパー

ダークマターとダークエネルギーの本ですが、この手のポピュラーサイエンスが好きでいつも目を通している人には、物足りないかも。新しい新事実はなし、ただし読み物としては読みやすく、翻訳もいいです。★★

忍法さだめうつし 荒山徹

ガメラは出てくるは、困ったらすぐに妖術で、登場人物が馬鹿にしか見えません。悪乗りしすぎ、独特の歴史観もなく、ちょっとがっかり。

柳生大戦争 荒山徹

朝鮮の創世神話「檀君神話」を元に、伝奇小説の書き方はこうですと作者が顔を出した作品です。第1章は、しっかりした小説になってますが、残りの2章は小説に書きあげるためのメモとしか思えません。★

海島の蹄 荒山徹

荒山版、実験短編集といったところです。まず、妖術が登場しません、堂々とした歴史小説です。タイトルにもなっている「海島の蹄」は、白石一郎。次の短編は、陳舜臣。そして、残り3編が荒山版。日本とも中国とも違う歴史観を見せてくれます。★★★

楊令伝 徂征の章 六 北方 謙三

今回は老人編といったところ。戦いの前に要らないものの片付けのようで、素直に楽しめません。みんないい人、といった雰囲気も幻滅。★★

処刑御使 荒山徹

朝鮮総督伊藤博文を暗殺するために、51年の時空さかのぼって、暗殺団が送り込まれます。SFというより、伝奇小説。アクの強い人物像が、物語を成立させてます。★★★

パズル「 THE T」

お誕生日プレゼントでもらったパズルです。４つの木片を並べて、19個の形を作ります。ようやく取り出して、やってみました。これが意外に難しい。

柳生陰陽剣 荒山徹

陰陽師で剣の達人、柳生友景。とにかく強すぎで、現実味がありません。それでも物語が成立してるのは、際立った歴史資料からの引用です。★★

時間封鎖 ロバート・チャールズ・ウィルスン

3部作の第1巻。人類の宇宙アクセスに新しい方法が提案されています。最も、それも数億年のオーダーが前提です。人類の存在の意味、神への信仰の意味はあるのかといったテーマの大きさも問題なし。引き回し役の1人称の文章も練れていて、さすがにヒューゴ賞と納得。★★★

Make: Technology on Your Time Volume 01～05 オライリー・ジャパン

何でも自分で作ってしまおうというカルチャー雑誌「Make」。実用記事が少なく、宣言文の山という構成で、3号で…と思っていましたが、5号まで出ました。神保町では、平積みされた姿も見かけ、ひらすら驚いてます。Gainerや、Arduinoも案外売れているようで、ハードウエア・クラッキングが日本でもカルチャーとして定着するのを祈ってます。★★★★★

ハリダンの紋章 ジャック・マクデヴィット

探索者を読んで、この本を読んでないことに気がつきました。手法は、探索者と同じで、歴史的な異物を探すために文献検索が続きます。見つけて戦闘があって、後日譚といった展開もまるで同じ。★★

三国志 第7巻 宮城谷 昌光

曹操は、とうとう魏を建国。劉備は、荊州、益州を獲得し、天下が３つに分断されます。3人がぶつからないため、派手さはありませんが、宮城谷氏はよほどこの時期が好きなのでしょう。実に地道な話題を丁寧に拾い、読み飛ばして当然といった記述にも意趣をこめています。他の三国志と最も違いが出る巻かもしれません。★★★

非対称化する世界ー『<帝国>』の射程ー 西谷修,酒井 直樹,市田 良彦

こちらも再読。酒井 直樹氏の「イラク占領と日本占領の語り」、市田 良彦氏の「帝国とジャパンマネー」部分。アメリカについてのまったく新しい視点をもらいました。日本の戦後と、イラク問題、金融危機、いまこそこういった論文が必要ですね。★★★★★

〈テロル〉との戦争 ９．１１以後の世界 西谷 修

歴史的な米大統領選とあちこちに書かれていたもので、今後の日米を考えようと、再読しました。この本と直接には関連しませんが。
まずは、日本の安全を守るためにも、テロの対象になるのを防ぐために、アメリカのテロとの戦争に参加するのをやめる。具体的には、自衛隊の派遣の中止。次に、日米地位協定の見直しを、日米の外交交渉の基本にする。この2点です。アメリカの傘の下の方が危なくなってきたのは、日本人なら感じているのではないでしょうか。★★★★

風の陣 風雲篇 高橋 克彦

道鏡Vs嶋足、天鈴コンビ。蝦夷のためとはとても思えない自分たちは正しいんだ陰謀コンビです。話し、むちゃくちゃ。大丈夫なのか？坂上田村麻呂が子ども姿で登場。★

探索者 ジャック・マクデヴィット

9千年前に失われた移住船を探す探索旅ですが、論文を書くための調査のメモのような文が延々と250ページ、3分の2程度続きます。これが退屈。その後、急に面白くなりますが、とにかく長い。★★★

エイリアン・テイスト ウェン・スペンサー

ネタばれになるので書きませんが、設定に問題アリでしょうか。家出探偵という、仕事に対する取材がまるでなかったのでは。設定が甘すぎて、現実感がないままで、もっと現実的でないストーリーが始まります。★

十兵衛両断 荒山徹

柳生十兵衛がコピーされた、技量も同じなら、顔も同じ。とにかく、チャンバラです。★★★

息子を奪ったあなたへ クリス・クリーヴ

9.11の後、あまりにもこの小説と内容が似通っているということで、一時発売が見合わされたというニュースが流れましたが、ようやく翻訳が出ました。ロンドンのサッカー場でオサマ・ビンラディンにより、主人と息子を爆発で殺された女性が、オサマと呼びかけ書いた手紙という形式をとった小説です。不安、動揺、怒りが人々の生活に影を落とし、世界を変えていきます。東京も、ターゲットになるのかと、不安がぶり返します。★★★

サラン・故郷忘じたく候 荒山徹

秀吉の朝鮮侵略を背景に、司馬遼太郎や、山田風太郎と同じテーマを、荒山徹ならではの手法で描いた短編集。朝鮮、日本の文化論をそのまま伝奇小説にしてしまったという本格時代劇です。★★★★

あたしと魔女の扉 J・ラーバレスティア

魔法を現代の小説の中でリアリティをもって使うにはどうすればいいのかの、回答のひとつだと思います。登場人物がとにかく魅力的。描かれた自然や、庭や街も存在感十分です。３部作なので、続編が楽しみ。★★★★

ようこそ女たちの王国へ ウェン・スペンサー

男性の数が少なく、女性に守ってもらい、男性の所有権も女性にある中世世界。そんな中で、女王姉妹に見染められた主人公の冒険。とこう書くと、日本のアニメのようですが、ちゃんと教養小説としてなりたってます。これ日本でアニメの原作にすればいいのに。★★★

シミタールSL‐2 パトリック ロビンソン

アラブ系はみんなテロリストに見え、民主党は大統領も含めて半ズボンの、能無し揃い。独断と偏見に満ちてます。軍人って恐ろしい、それでもよくできた小説なのは確か。ハマスが原子力潜水艦を使って、テロ攻撃をアメリカに行います。細部が綿密に描かれていて、荒唐無稽な作戦が現実に思えてくるところはさすがです。★★★

マーブル・アーチの風 コニー・ウィリス

珠玉の短編５編が収録されてます。文章を重ねるごとに、奇妙な現実か妄想かわからない真実が浮かんでくる、そんな文章を短編でやってしまうのですから大したものです。内容は、昔のSFファンなら奇妙な味といった路線。古典的なSFテーマを現代的に仕上げてあります。★★★★

翔竜雷撃隊―覇者の戦塵1944 谷 甲州

技術者が出てこない、設計思想が物語の軸になってないで、今後の展開のための前日譚のみ。うう。とにかく、次号が一年もまたなくても出ることを期待します。★★

彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス ジャック・キャンベル

ある日突然艦隊を指揮する総督に指名され、自分が英雄ではないことを知りながらも、天才的な指揮と、英雄行為で艦隊を率いる男。というわけで、男の子のハーレクインロマンそのものです。まだ1巻ですが、そのうち戦術と、戦略の違いが問題になってくるのでしょうけど、そういったことを越えて、読むのを楽しむべき本なのでしょう。★★

死せる魔女がゆく ハリスン キム

主人公は魔女で、相棒は吸血鬼。悪魔や、狼男と総出演です。しかし、展開は面白いし、道具仕立てや、スパーマンがでないように規則もそこそこで、よくできてます。主人公が優秀な刑事のはずなのに、感情的すぎ、計画性まるでなしなのは1巻ということで、次号に期待します。★★★

CSI:マイアミカルトの狂気 ドン・コルテス

ホレイショの犯人決めつけがますます進んで、科学がどこかに吹き飛んでます。これでは、普通の刑事ものと変わりません。ちょっとがかり。★★

逆説の日本史 近世改革編 15 井沢 元彦

今回は、徳川吉宗に、松平定信が馬鹿で、経済を分かってないというお話でした。★★

グローバル化と奈落の夢 西谷 修

女性報道写真家のホックスタインの報道写真、ナイルパーチを扱った映画「ダーウィンの悪夢」。こうした作品を通じてアフリカを考えるシンポジウムの記録です。グローバル化によって起きている現状について、日本国内への影響はよく語られますが、ここまでのアフリカの現状が語られることは、メジャーなメディアでは難しいと思います。★★★★★

ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト 最新科学が明らかにする人体進化３５億年の旅 ニール・シュービン

ポピュラーサイエンスの良書と言えるでしょう。タイトル通り、形態発生を取り上げながらも、ヘッジホッグ遺伝子などの、分子生物学、しゃくりはオタマジャクシの鰓＆肺呼吸の名残が引き起こす不具合といった広い範囲に目をやり、実際のフィールドワークにも触れています。自分の子供の話で後書きを終えていますが、まさしく自分の子供に読ませることを考えて書かれた本に仕上がってます。そして、そうした本は大人にも十分面白いのでした。★★★

千本雨傘 公事宿事件書留帳 沢田ふじ子

一時、お説教臭くて、読むのもわずらわしい感じになってしまった、このシリーズですが、今回は復活してます。しかし、ボヤキ気味の後書きはそのまま。★★